カワイイxカガク

宇宙コラムVol.1 「宇宙」の仕事をしている人とは?

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こんにちは、暮伊他宙子(くれいた みちこ)です。近ごろ宇宙開発や宇宙研究の明るいニュースが増えていて喜んでいます。いっぽうで、「宇宙」をひとくくりにされることについては、ちょっと不本意に感じます。鉄道マニアに「撮り鉄」「乗り鉄」など色々なタイプがいるように、宇宙好きにも棲み分けがあることはまだまだ知られていません。

ということでこの場をお借りして、これからますます拡大するであろう宇宙しごとの分野と、その研究や開発などに携わっている人の特性をご紹介します。

宇宙しごと人のタイプ

「宇宙関係の仕事をしている」という人に出会ったら、まずは宇宙のどのあたりが専門かを聞いてみてください。

宇宙飛行士、国際宇宙ステーション(ISS)などの人工物を答えたら

  ISSや人工衛星は、最も地球に近い分野です。スタバのラテ(スタバラテ)の底面の大きさを地球に見立てると、国際宇宙ステーションの周回軌道は3㎜という、ゴマ粒ほどの距離。気象衛星やGPS衛星でも14㎝、親指と人差し指を広げた程度の近さです。

  宇宙開発のさかんな領域なので、関係者の多くは工学部出身のエンジニアです。宇宙飛行士に憧れてこの道に進んだという、いかにもさわやかな動機の持ち主は意外にも希少で、メカ系のSFアニメが好きだったから、という人のほうが大勢います。特にアラフォー世代の男性に限っては、石を投げれば機動戦士ガンダムファンに当たるでしょう。

火星や木星などの太陽系の天体を答えたら

  同じくスタバラテの底面を地球の大きさに例えると、太陽とは656mなので東京スカイツリー1個分強、木星の公転軌道では2760mなので羽田空港の滑走路1本分の距離になります。

  ここまで遠くなると理論研究や観測がメインの分野となるので、工学部よりも理学部出身者による研究職が多数派になります。この道に進んだきっかけは、ボイジャーやパイオニアに代表される探査機が撮った画像を見たり、アーサー・C・クラークの小説を読んだりなど、アカデミックなものが増えてきます。この分野では、天体どうしを比較する研究手法が効果的なので、複数の天体を並行して研究するのが主流です。また、研究者自身も特定の天体への思い入れがなく、去年の論文は火星だったのに今年は金星に乗りかえている、なんてことがざらに起こります。もし火星が、「ひどい、私というものがありながら。あんな厚化粧の星のどこがいいのよ!」とでも喋ってくれたら、別の意味でがぜん面白くなる分野です。

星雲や銀河系と答えたら

  今度は地球の公転軌道をスタバラテの底面とすると、大マゼラン星雲で月より少し遠いぐらいの32万㎞。最も近い銀河のアンドロメダでも466万㎞で、金星の公転軌道を過ぎたあたりの距離になります。もはや天体の位置を天体で例えてしまうという残念な展開になるスケールです。

この分野の研究者は、ご想像のとおり、子供のころ天体観測に熱中した人、またはハッブル宇宙望遠鏡に代表される壮大な天体の観測画像に感銘を受けた人が大多数です。大人になってもその気持ちを失わず、他の分野と比べると熱意があり、「この研究大好き!」感がにじみ出ているのが特徴です。しかし一方で、「それを研究して一体何の役に立つの?」という夜光雲レベルに凍てつくシビアな質問にもよくさらされる、気の毒な人たちでもあります。

実はみんなムッツリ

さて、ここまでは宇宙しごとをしている人に会ったことを前提にお話ししてきました。しかし、実は宇宙しごとをしている人を見つけるのは簡単ではありません。なぜなら、基本的に彼ら・彼女らは、自分がそういった職業に就いていることも、宇宙が好きだとも言わないからです

その理由は二つあります。一つ目は、「宇宙」という言葉が一人歩きして、自分の専門外の質問をされるのを避けるため。うっかり専門外の質問をされても、科学的に正確でないことを答えるなんて理系の習性上許すことはできず、かといって期待で目をキラキラさせている無垢な質問者を前に「知らない」とも言いづらく。仕方なく、できもしない洒落た切り返しを必死に考える、という苦い経験が一度はあるからです。筆者のことですけど。

二つ目の理由は、自分が宇宙好きであることを認めたくないから。憧れて生業にしたものの、現実は数式と解析と締切とお金の工面に追われる毎日で、冷めてしまったといえます。ドラマ『下町ロケット』の最終回で、打ち上げに成功して関係者が抱き合って喜ぶシーンがありましたが、実際の現場にはそういうアツい空気はないです。残念ながら。

それでも、毎年の宇宙博の情報は欠かさずチェックするし、それを誰にも言わずに観に行くし、人工衛星ミッションのグッズをもらえば机の一番いいところに飾り、天体ショーがあれば「そりゃあ理論的に起きて当たり前じゃん。騒ぐなんてアホらしい。」と言いつつ帰り道には必ず夜空を見上げる、そんな人々なのです。

サブ提出用

もしもこの先、聞いてもいないのに「自分、宇宙の研究してるんだけど」と話してくる男性に遭遇したら、かなりあやしいです。気をつけてください。また、篠原ともえさんや中川翔子さんのように、「星空を眺めるのがロマンチックで大好きなんです。うふふー☆」なんて言えるカワイイ夢見る宙ガールでいたい方は、ガチの宇宙研究の道には進まないことをお勧めします。

 【イラスト】山本 真衣

 ★宇宙コラムVol.2★ 人工衛星の『ハッピーエンド』と『バッドエンド』

☆宇宙コラム・ライター☆

清霜(きよしも)

理学修士、システムエンジニア。九州大学大学院 理学府地球惑星科学専攻 修士課程修了。在学中は太陽系の惑星大気・気候モデルを研究する。卒業後は電機メーカーにてシステムエンジニアとして働く。小学生のころ、アニメ『宇宙戦艦ヤマト』(初代)と『タンタンの冒険旅行』シリーズに熱中する。宇宙科学の道に進むことを決定づけたのは、高校時代に読んだアイザック・アシモフの『天文学入門』(絶版)。

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