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駿台予備学校進学情報センター センター長が予測する理系分野の2016年度入試動向

取材日:2015年8月

三大予備校の中でも、国公立大・難関私立大理系の進学に定評がある駿台進学情報センター・センター長 石原賢一氏に、昨年に引き続きお話を伺ってきました。石原氏は、30年以上にわたり駿台予備学校に勤務し、常に大学入試対策の現場において、数多くのデー タ分析を行い、それに基づいた志望動向の変化や具体的な受験対策について、新聞や雑誌等のマスコミに多くのコメントを発信している一人です。

 本稿では、石原氏に前年度(2015年)の大学入試動向から見えてきた3つのキーワード:「新課程初年度入試」「現役中心入試」「文低理高終焉」について、また志望校合格に向けて「保護者の子供への関与の在り方」についてお届けいたします。

 

新課程初年度入試:新しくなったセンター試験

2015年入試は新課程によるセンター試験1年目。特に理系の負担が増えたという話を聞いたのですが、具体的には、どのような影響があったのでしょうか?

 15071510372613832015 年度センター試験では、数学と理科を新課程で学んだ高校生の初年度入試となり、新課程に基づいて各分野から万遍なく出題されました。数学に関しては、出題 分野や範囲に変更はあったものの、出題科目と選択方法に変更はありませんでした。一方で、理科に関しては、出題科目の体系が大きく変更され、理科①(基礎 科目)と理科②(専門科目)の2グループに分かれての出題となり、文系も理系も理科の負担が増えました。

 国公立大理系受験で多いのは、専門科目4科目のうちから2科目を選択するパターン(「物理」「化学」「生物」「地学」の4科目から2科 目を受験)です。単位数は2科目で専門科目履修の前提となる基礎科目を含めると計12単位[1科目:(基礎2単位+専門4単位)X2科目]の出題となるた め、旧課程時の理科の「Ⅰ」の科目2科目(6単位:1科目3単位X2科目)と比べてほぼ倍に負担が重くなったということです。

 国公立大文系受験も同様に、基礎4科目のうち2科目を選択するパターン(「物理基礎」「化学基礎」「生物基礎」「地学基礎」の4科目か ら2科目)。単位数は2科目で4単位であり、旧課程時の理科の「Ⅰ」の科目1科目3単位と比べて1単位分負担が重く、しかも科目数が増えたことがこれまで との大きな違いです。このため文系では、国公立大を敬遠して私立大を受験する傾向が見られました。

 このようなセンター試験の変更の結果、国公立大理系から理科の受験科目数が1科目だけでいい私立大理系に志望校を変更したり、さらには理系から、文系に転向した受験生も見られたのが今年の特徴ではないでしょうか。

※私立大理系でも理科の受験科目数が2科目の大学(慶應義塾大学や早稲田大学など)もありますので、受験科目数に関しては、各大学の選抜要綱や募集要項を確認してください。

 現役中心入試

旧課程で卒業した既卒生も新課程に沿ったセンター試験を受験したのですか?

 2014年度までに卒業した既卒生に関しては、現役生とは異なり、経過措置として旧課程による受験も可能でした。しかし、2015年度 センター試験の経過措置については、高校からはうまく情報が発信されなかったことから、受験生も保護者も正しい情報を入手することが難しかったと思いま す。そのため、次年度の新課程によるセンター試験を敬遠し、第一志望校をあきらめてでも、とにかく合格した大学への進学を決断した受験生が多かったようで す。その結果、2015年度入試では既卒受験生が大きく減少した結果、現役生中心の入試となったわけです。

 文低理高終焉

「文低理高」の傾向が沈静化してきたという話を聞きましたが、実際はどうだったのでしょうか?

 

首都圏や関西圏、中京圏などの都市部では景気の回復による就職環境の好転と、先ほどお話した新課程における理系科目の負担増に伴って、社会科学系の人気が回復し、東大文一や一橋大法といった法学系やグローバル系学部の志願者数が増えてきています。

 理系の多くの場合、卒業するまで6年かかりますが、文系ならば4年後に卒業できます。景気が悪いときは景気の回復を期待してなるべく卒 業まで長いスパンで考えますが、景気が上向きの時は早く社会に出たほうが有利と考えて短いスパンで考える傾向があります。昨年から少しずつ回復を見せてき た経済状況の影響を受けて、都市部では「文低理高」が沈静化してきたのではないでしょうか。といっても、志望者数は文系全盛期(2009年頃)の8割くら いですし、上位層(旧帝大を中心とした難関10大学)では相変わらず4:6で理系への志望者数は多いです。また、地方ではメディカル系を中心に、地元就職 に有利とされる資格取得系のメディカル系学部の人気は堅調です。

 人気の理学部

医学部・薬学部などの医療系や工学部、理学部などの学部ごとの動向について教えてください。

 理系学部では、理学系の志願者減が目立つ一方、工学系は難関大を中心に志願者が増えています。また、近年人気が高かったメディカル系では、医学系は若干の志望者数減ですが、薬学系の人気が大幅に下がっています。

 人気のある学部系統で言うと、工学部は土木・建築系といった社会インフラ系、ロボット開発につながる機械系、そして電気・電子、情報系が人気ですね。これはやはり、保護者だけでなく、受験生もまた社会状況や経済状況をよく理解しているからだと思います。

理系女子におすすめの学部はありますか?

 今の時代、女子も男子もあまり関係ありません。様々な分野で理系女子の活躍が益々期待されていると思います。以前は男子ならではの分野もありましたが、関係なくなってきているのではないでしょうか。

 従来は、女子に人気だったのは、化学や生物、住環境系の建築、国家資格取得な可能な医療系や生活科学系ですね。

 おすすめの学部を答えるのは難しいですが、薬学系や生命科学系出身者が多く活躍する製薬会社、化粧品会社などの分野などは、女子に向い ていると個人的には思います。新薬を開発するのは、ひとりの社員が一生かけて一つ開発できるか否かの仕事です。既存のものを活かしながら、そして組み合わ せながら新薬を開発するという作業は、女子に向いているかもしれません。

 保護者の関与について

 昔と違い、子供の受験や進学に関する保護者の影響は大きくなってきています。駿台のアンケート調査でも、20年前は「大学合格に関して 保護者の力は影響しますか」という問いに、「影響する」と答えた高校3年生が3分の1だったのに対して、今は3分の2が「影響する」答えています。また、 保護者では7割の方が、自分の姿勢が子供の合格に影響すると回答します。

文系・理系決定や進路決定の時期について教えてください。

 文理の決定は早いほうがいいですが、基本的には、本人に何をやりたいかを考えさせることが一番重要です。保護者に自分の気持ちを伝える か伝えないかは子供によって違いますが、子供たちは常に将来何をしたいのか考えています。特に女子は自分の意思を持っています。その思いを大事にしてあげ る必要があります。決して、先回りして、否定をしてはいけませんが、社会の先輩として、また保護者として客観的事実を伝え、明らかに間違っている時はそれ を伝える必要があります。

 社会は常に変化します。だからこそ、子供が大切にしている思いを尊重し、その思いを育てることが大事です。自分が好きなことならば、も しくは自分が決めたことならば、様々な状況にあっても対応することができます。一方、逆説になりますが(笑)、17、18歳のときに思っていた職業に就い ている人は殆どいません。それでも、なんとかやっていけるのも現実です。いずれの場合にも重要となるのが、反動力(レジリエンス)だと私は考えます。

多くの保護者が反動力(レジリエンス)の重要性について感じていると思います。ストレスに負けず、心の折れない困難に打ち勝てる人間になって欲しいと願っていると思いますが、ずばり保護者ができる事は何でしょうか?

 都会は特に世界が狭いので、世界を広くしてあげる必要があります。そのためには、できるだけ特別な経験を創ってあげることが大切です。 他流試合をたくさん経験させること。子供が集中してがんばれるものと出会えるきっかけづくりです。そして、その経験はできるだけ小さい頃からのほうがいい です。小さい頃から、色々なこと・場面に触れる体験させて、好きなことを発見させることです。小さい頃からたくさん見せる。そうすると、中学校、高校で自 然に広がってきます。

 もちろん、様々な場面に触れる最中、楽しいことばかりでないかもしれません。しかし、小さい頃は「反動力」が強いから、その経験をして おくことで、大きくなったときに耐えられる人間になれます。そして、ストレスをどうやって発散するかも心得ることができるようになります。例えば、スポー ツをやっている人は小さい頃から挫折の連続を経験しているので、強い。そして、色々な立場や年齢の人たちとつながっているので、コミュニケーション能力が 高い人が多いのです。

多様化する入試方法でも「将来何がやりたいのか」、そのために「何を学びたいのか」を伝えられる能力が受験生に求められると聞きました。

 はい。2016年度から東大は推薦入試(学部単位)を、京大は特色入試を導入し、この中で医学部医 学科では「飛び入学」も実施します。既に一般選抜以外の特別選抜(推薦、AOなど)を導入している難関大学(東北大、筑波大、慶應義塾大、早稲田 大・・・・など)がありますが、共通していえることは、「飛びぬけた才能をもった学生」「国際的な場で活躍した実績を持っている学生(※)」を入学させた いという意図があるということです。(※国際科学オリンピックなどへの参加者)

 「高い学力(偏差値)があるから東大、京大へ進学しました」という学生や、「東大で2年間の前期(教養)課程を通して色々なことを学ん で、それから自分のやりたいことを探したい」という学生ではなく、「ロケットを飛ばしたいから宇宙工学を学びたい。そのためには最高の環境がある東大で学 びたい」、「医学研究者になって、ひとつでも病気を治したい。そのために一日でも早く京大医学部医学科で学びたい」という学生)を、特別選抜で一定数入学 させたいということが背景にあります。

 したがって、「将来何がやりたいのか」、「そのために大学で何を学びたいのか」、「それを成し遂げるための資質があるのか」などが問わ れます(大学によって特別選抜の内容は異なります)。 特に理系学部では、科学で、数学で、「尖った」特別な能力をもっている人材を育てて生きたいという 強い意図が大学側に働いています。このような特別選抜にも対応できる人間になるためにも、現小学校3年生から本格的に改革がなされる表現力重視の新しい入 試制度に対応できるようになるにも、小さい頃から様々な経験をし、自分が好きなことを発見できる機会を創出することが保護者の役割のひとつだと思います。

 2016年度入試にむけて

 そして、いよいよ2016年度入試から東大で「特別選抜」が導入され、後期が廃止されます。その受け皿として東工大の第7類、一橋大の 後期に志望者が集中するなど、新たな動きが起こってきます。また、これまで述べてきたとおり、理系人気も沈静化してきているので、受験生の皆さん、そして 保護者の皆さん、弱気になる必要はありません。志望校を目指してください。「チャンス」だと思います。そして、国公立大を志望される受験生は、理科の負担 が増えた分その対策にも力を入れられるよう、早いうちから国語、数学、英語の3教科の基礎を固めておくことをおすすめします。

 

 ※石原氏から保護者の方々へのアドバイス記事:駿台予備学校進学情報センター長による「保護者へのアドバイス」もご一読ください。父親の役割、母親の役割についてなど具体的なアドバイスが満載です。

※「2015年 高校3年生が志願する大学ランキング」もあわせてご一読ください。

★東大・お茶大・慶應・早稲田・理科大など、先輩理系女子たちの受験勉強・志望校・併願校に関するリアルな情報についてもご覧ください。苦手科目の克服方法、主要教科と副教科のバランス、浪人を選んだ理由などなど第一志望合格に向けての様々な情報が満載です。「先輩方の勉強方法・志望校・併願校を教えてもらおう!

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