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世界トップレベルの研究拠点で活躍する惑星物理学者の世界観とは?

東京工業大学地球生命研究所(ELSI)研究員

藤井 友香 さん

東京工業大学地球生命研究所(ELSI)研究員

京都出身。東京大学理科Ⅰ類合格。2013年3月東京大学理学系研究科で博士号を取得。研究テーマ:系外地球型惑星の詳細を将来観測でどうやって調べるか。研究領域:系外惑星の観測的特徴付け、惑星の表層環境、アストロバイオロジーなど惑星物理全般。

取材日:2014年3月

世界トップレベルの研究拠点形成を目指す文部科学省のWPIプログラムによって設立された、東京工業大学地球生命研究所(ELSI)の研究員と して活躍中の藤井友香さん。大学院時代から共同研究をしているプリンストン大学へも毎年滞在するなど、国境を越えたチームで学際的研究の一員として期待さ れている研究者の一人。

物理との出会い

小さい頃から宇宙に興味があったんですか?

いいえ。小学校のころは宇宙に興味があったわけではありません。自然溢れる環境に育ったこともあり、森や山が大好きで、将来は旅人になって、旅をしながら自然に触れ、その壮大さを表現する小説家や詩人になりたいと考えていました。

壮大でロマンチックな夢ですね。

小さいころから「自然」に関心があって、「世界ってどうなっているんだろう?」という疑問をずっと持っていましたね。中学生になったとき、その疑問 は、ますます膨らんでいって、人間を含めた世界全体はとても複雑にできていて、どう捉えていいのかが分からなくなっていました。

そんなときに、物理と出会ったんですね。

はい。高校に入って、物理という学問を知って、私は「こういった答えの出し方が好きだな」と思いました。自然現象を、できるだけシンプルに、しかも 数字を使って、客観的に起こっていることを記述することが、とてもステキと思えたんです。そして、かなり大きなスケールにまで適応できるという、適応範囲 が広いところも物理の魅力ですね。

大学受験

進路・志望校はどのようにして決められたんですか?

そのころ「宇宙」に興味が湧いてきていて、大学を調べるときに「天文」というキーワードで探しました。その結果、東大で学べることがわかったんで す。後から、京大でも学べることがわかったんですが、「宇宙物理学」という名前だったので、高校生の私にはわかりませんでした(笑)

いつ頃から受験勉強をスタートされたのですか?

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高2年の冬からスタートしたと思います。「合格したい」という緊張感やプレッシャーはあったと思いますが、受験勉強というよりも、勉強本来の知ることの面白さに魅かれていたので、勉強の辛さは今とはってはあまり心に残っていないです。

どのような受験勉強をされたのかを教えてください。

数学だけ個人塾にお世話になりました。数学と物理は好きでしたが、点数的には普通。私には特に「得点源」となるような教科はなかったですね。好きとできるは違いますから(笑)

英語と国語は通信教育。英語は好きだったので、色々と自分なりに工夫しました。例えば文法は、かなり薄めの市販教材を買ってきて、ちょっとした空き 時間を利用して解きすすめ、日々ちょっとした達成感を味わうという勉強法でしたね。それと、単語帳は語源が載っている単語帳を使い、リスニングはラジオを かなりがんばって聴いていました。とにかく、あきらめずに聴くことです。

大学時代

大学での研究について教えてください。

大学3年生から理学部物理学科を専攻だったんですが、実はこの学科の4年次は、研究室に所属する形式ではなく、前期と後期で、実験+実験もしくは実 験+理論を履修するという形式でした。なので、研究室に属して卒論を書くということはなく、実験のレポートを書くという形式でした。

今でも印象に残っているのが、放射線検出器を作るという実験です。持ち運びができるようなお弁当サイズのモノを、3人の仲間と講師の方と一緒にテーマからデザインまで、ゼロから話し合って作り上げていくという実験でした。

放射線検出器って大学生が作れるものなんですか?!

私も使った経験はありましたが、自分が作るとは思っていませんでした(笑)
しかし、いったん取りかかり始めると、検出器の物質を何にするのか、電池は何を使うのかなどを調べたり、JAXAに部品を取りに行ったりと、毎日議論が白熱して・・・作る過程、研究する過程、全てが楽しかったです。

就職か進学か悩まれましたか?

悩みました。就職するほうが、大学院に進んで研究をつづけるよりも、社会の役に立てるのではと考えていました。科学の中でも基礎研究は、人々の生活 を即座に豊かにするものではないかもしれないが、人間が持っている世界観、世界観というのは人間が持っている一番大きなものであると私は思っているんです が、それに直接作用できるものであると感じるようになり、そして、それはとても意味があることであると自分の中で納得でき、研究者の道に進むことを決断し ました。

大学院時代

大学院ではどのような研究をされていたんですか?

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大学院では、宇宙のことを研究する宇宙物理学グループに所属しました。先生はもともと宇宙論の研究者なのですが、系外惑星の研究に大変興味を持って いる方で、私もその研究分野を知るうちに、どんどん興味が深まってきて、私ができることがあるかもと思えたんです。この研究室に所属したことによって、必 然的に地球惑星科学科の方々と関わることが多くなって、活動領域がどんどん拡大し、自分の所属する学部がどこわからなくなったまま現在に至っています (笑)

【写真】すばる望遠鏡で観測中、酸素不足になり(注:すばる望遠鏡のあるマウナケア山頂は標高4,205m)、酸素チューブを使っているところ

系外惑星の研究って?

系外惑星っていうのは、太陽系の外にある惑星のことなんですが、その存在を知らせるシグナルが弱すぎて、20世紀末まで系外惑星の検出は進んでいま せんでした。しかし、技術の進歩によって、これまでに900個くらい検出されてきていますが、私は検出された系外惑星の表層がどうなっているか、特に地球 のような環境があるかどうかを調べる方法について大学院で5年間研究していました。

研究者としての活動

現在は東工大のELSIとプリンストン高等研究所(IAS)で研究活動を行っているんですよね。

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はい。ELSIとIASは研究提携にあるので、定期的にIASには滞在しています。また、物理的にIASの近くにあるプリンストン大学は、大学院時代から共同研究をさせていただいている教授がいらっしゃるので、そちらでも研究をさせてもらっています。

【写真】Princetonに短期滞在して日本に帰る直前に、Princetonの大学院生達とご飯を食べたときの写真

最近の研究活動で「おもしろい!」と思ったことを教えてください。

天文観測で系外惑星を調べるためには、まず既知の惑星を遠くから見たらどう見えるのかを把握しておかなければということで、最近、地球や系内惑星の 表層環境やその成因などについて色々調べていたのですが、既にわかっていることでも、遠くから見ても分かる特徴という、普段とは異なる観点で改めて見てみ るということが面白いですね。

また、生命の存在についてどこまで探れるかということに関する研究で、自分では思い至らなかった可能性が共同研究者から提案されたりするんですが、このように新鮮なアイデアが出てきたり、議論の中で話が膨らんだりするときは、とても面白いです。

とにかく、ELSIには色々な人が集まってきているので刺激的です。DNAとか出てくるので、高校以来ぶりで生物をやりなおしています。新しい気持ちで勉強しなおしています(笑)

研究者としての藤井さんの原動力は何ですか?

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大きなことを言えば、私達は宇宙の中でどのような存在なのかが知りたいんです。それが明らかになることで、世界の見え方が変わってくると思うんです。

私は世界観を気にするタイプで、世界をいろいろな見方で見たい。世界のことにもっと気づきたいという、それは全く詩人になりたいという動機と同じ気持ちです。あとは、日々の研究や勉強の中での小さな発見が、地味に楽しいので、原動力になります。

【写真】NYのメトロポリタン美術館でプライベートタイム満喫中

理系女子学生へのメッセージ

大学に入った時、研究を重ねて大学教授になれればと漠然とイメージしたものの、仮に博士号がとれても、どうやってキャリアを積み重ねていけばいいの か、果たして食べていけるのかなど全くキャリアパスが見えていませんでした。全く人生のことを考えていませんでしたね(笑)しかしながら、皆さんには是非 30歳、40歳の自分の人生のイメージを抱いてもらいたいと思います。例えば、「海外国内問わず、研究者として活躍していたい」とか。やはり、世界の様々 な分野で活躍している日本人女性をSNSなどで拝見すると本当に励みになるので、皆さんにもどんどん頑張ってもらいたいと思います。私も一緒に頑張ります ♪

ありがとうございました。

  • カメラマン:工藤 玲久

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