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理系の知識を活かし、科学に通じた翻通訳者としての道を拓く!

沖縄科学技術大学院大学 広報ディビジョン ランゲージセクション 翻通訳者

リー 仲宗根 尚子さん

沖縄科学技術大学院大学 広報ディビジョン ランゲージセクション 翻通訳者

沖縄出身。2008年筑波大学生物学類卒業。大学3年次にカリフォルニア大学デイビス校 植物生物 学部に1年間交換留学。2010年東京大学大学院 農学生命科学研究科 応用生命化学専攻 修士課程修了。2011年同大学院博士課程中退。博士課程在籍 中に理化学研究所植物科学研究センターにてサイエンスコミュニケーション・インターンを経験。また、修士及び博士課程を通し国際農林水産業研究センター生 物資源領域にて研究補助として従事。その後フリーランス翻通訳者を経て、2012年OIST財務・事業開発ディビジョン技術移転セクション、2014年よ り現職。プライベートでは2010年に結婚。ご主人もOISTで研究者として活躍中。

取材日:2015年3

中高生の頃のお話

環境豊かな沖縄育ちということですが、やはり小さい頃から自然や科学に興味があったんですか?

実は理系科目は苦手で、文系科目が得意だったんです。でも生物学は、自分自身のことや他の生き物・世界がわかるので好きでした。好きだった英語や国 語は、大学で学ばずとも自力で勉強できると思い、理系進学を選択して苦手な数学・化学の勉強をスタートしました。知りたいことを突き詰めるという楽しいこ とをしてお金を稼げるのはすごいと思って研究者を志望していたのですが、母はそんな私の本気度を試すため、わざと反対してみせてくれましたね(笑)

とても興味深い選択理由といお母様ですね。受験勉強は「自力」が主力の手段だったんですか?

もともとは、塾に行かずに勉強できるようになりたかったんです。でも、いざ受験生になって本格的に勉強を始めたところ、机に長く向かっていられない ことがわかって(笑)。そこで、集中力を培うために塾へ通い始めたんですが、それがすごく良かったんです。塾で勉強の習慣が身に付きましたね。それからは 塾に行かず、1人で勉強をしていました。

なるほど、まさに受験の「あるある」ですね。その後、筑波大学に進学された理由について教えてください。

oist_03_1学生・教授の割合と、研究の幅広さです。当時の私は、生物学の「これがやりたい」というテーマがなかったので、多分野の教授がいらっしゃる筑波大学が魅力的でした。あと、つくばが研究都市として進んでいるため、周りの研究所も見たかったというのもありますね。

大学・大学院時代のお話

研究都市・筑波大学での学部生時代はいかがでしたか?

一言でいうと、「世界が広がった」ですね。文系・理系を問わず、学問が好きな自分にしかできないことをやろうと思い、哲学も文学も学びました。その おかげで、学問的な視野だけでなく、友達の環も広がり、結果的に留学しようと決断できました。ある教授が、最後の講義でビートルズの「Let it be」を流して下さって、遺伝子にはそれぞれ個性が詰まっているのだから、一人一人がユニークでいいじゃないか、とおっしゃってくださったのが、とても印 象に残っていますね。

大学3年次に留学をされていますが、その理由とカリフォルニア大学デイビス校を選んだ理由、留学費用について教えてください。

oist_03_4大 学院を日本かアメリカどちらにするか迷ったため、比べるために留学しました。大学外の研究者の方々が、人生を豊かにする上でも、研究の世界での成功に繋げ るためにも、留学を勧めてくださいました。その中でも特に、稲の研究者がカリフォルニア大学のデイビス校を進めてくれたんです。
費用に関しては交換留学を利用しました。交換留学制度は、留学先の大学には学費を納めず、元の日本の大学に払っていればよいので経済的です。筑波大学では もともと学費の半額免除を受けていたので、さらにお得でした。生活費・渡航費は、返還義務がない上、金額もよかった平和中島財団に全てお世話になりまし た。

【写真】留学時代:カリフォルニア大学留学中、学会発表にて優秀賞を受賞

東京大学大学院に進学しようと思った理由は?

実は、大学院に行くことは決めていたのですが、日本の大学院に行くのかアメリカに行くかで迷っていました。最終的には両親のことを考えて日本に帰る ことにしましたが、日本のどの研究室に行けばよいのかわからず、留学先で同じ分野の研究者に意見を訊きました。「日本の中で尊敬できる研究者は?」と訊い た時に、「この先生が一番だよ」って言われた東京大学の先生がいたんです。日本の外からでも素晴らしいと評価されている研究者の下でぜひ学びたいと思い、 東京大学大学院に進学しようと決意しました。

大学院では何について学ばれていたのですか?

oist_03_3植 物分子生理学を学んでいました。植物は私たち人間のように動けないため、その場で生き続けようとする力があるんです。その力を分子レベルの遺伝子やタンパ ク質の働きから解明することによって、もし厳しい環境でも生きていける作物を開発できたら、食料難などの問題も解決できるのではないかと研究を続けていま した。

【写真】東大大学院時代:研究室での風景

現在から振り返って、社会に出たときに役立った大学時代の勉強・経験にはどのようなものがありますか?

自分に正直に、好奇心と興味を持ったものを勉強できるのが大学時代なので、学部の枠を超えてどんどん興味のあることをしてみました。その経験がすべて今に活きています。

現在のお話

現在のお仕事内容について、教えていただけますか?

oist_03_2沖縄科学技術大学院大学(OIST)では、大きく分けて2つの経験をしています。

1つ目は、技術移転。これは、大学の研究成果を論文だけではなく、サービスや商品など形あるモノとして社会へ送り出す仕事で、大学と産業界をつなぐ架け橋 と言ってもいいと思います。例えば、特許化するとかですかね。交渉をこなす精神的なタフさも必要ですが、科学技術で世界を変えられる第一線に立てるんで す。この時に得られたビジネスや法律の知識は、今後も役に立つと思っています。

2つ目は、翻訳・通訳です。OISTでは学内は英語を使いますが、日本語が話される社会の中にあります。そのギャップを埋める重要なインフラが翻通 訳です。政府関係者や国内企業の方々が来た時の通訳をしたり、高校生などに対して研究者の発表を通訳したりします。国からの文書やOISTが作成した報告 書の翻訳、OISTの研究成果やイベントについて情報発信するウェブ記事の翻訳などがありますね。研究に関する記事の翻訳の前には、伝えたいメッセージや 概念を根本から理解するために論文に当たるようにしています。これは論文を身近に感じられる理系出身者だからこそのアプローチだと思いますし、訳文の質を 高めることにつながります。OISTはまだ歴史が浅く、守るべき伝統などがないぶん、新しいことに挑戦しやすいです。

ご主人も同じ職場で研究者としてご活躍だということですが、夫婦で働く際のエピソードなどがあれば教えてください。

oist_03_6ランチを毎日一緒に食べられるなど、時間がない中でもコミュニケーションがまめにとれるのはいいですね。通勤も一緒にできますし、忙しいときは、デスクにお弁当を置いておいてくれることもあるんです(笑)。

【写真】旦那様・お姉様と沖縄のビーチで

 

日本とは思えない環境ですね。これからの生活や仕事での夢について教えてください。

oist_03_5そ うですね、翻訳・通訳がすごく楽しいので、一生のキャリアにしたいと思っています。この仕事は、働きながらたくさん勉強できるので、もっともっと成長した いです。仕事が終わってからも猛勉強中です。今後、翻訳を極めるならば「出版翻訳」をしたいと思っています。自分が中高生の頃にワクワク・ゾクゾクさせら れたような、面白い科学の本を見つけて翻訳したいんです。通訳を極めるなら、一番難しいとされている「会議通訳」に挑戦したいですね。オールマイティーな 議題に対応できるよう、科学や政治など多分野の知識を広げたいです。でも、強みが欲しいので、一つの分野を徹底的に勉強していきたいという思いもありま す。

【写真】通訳者として:学生時代から尊敬していたノーベル賞受賞者 ティモシー・ハント博士と 「教科書にも載っているような方とお会いできるなんて夢のようでした。これも通訳の醍醐味です!」

後輩の理系女子達へ、アドバイスやメッセージを!

他のことが面白そうだと思ったら、思い切って現在のラボの外に出てみることもお薦めします。そうすると、「理系人」としての価値が再定義されるんで す。外に出ると違う価値観を目の当たりにできるので、その中での自分の価値が見えてきます。そうすることで、自分らしく輝けるように前へ進めるのではない かと思いますね。
あとは、英語はしっかり勉強した方がいいと思います。もし留学したいなら、休学することなどは全然気にしなくていいと思います。私自身、留学時代の1年ほど人生の中で楽しんだ時はないですから。人生であれほど勉強し、あれほど遊んだ時はないですね。

研究職以外での仕事の可能性が広がりました。ご主人と一緒に働ける環境もステキですね。貴重なお話をありがとうございました!

 

★OSITで活躍する「ステキ理系女子」を他のページでも紹介しています。是非コチラもご覧ください。

 【キャロリン スタージンスキさん】:ドイツ出身のキャロリンさんは、現在OISTの博士課程プログラムにて「遺伝学モデル」を研究中。博士号を取得する地として、なぜOISTを選択したのか、また「母親」と「学業」の両立ついにてのお話もあります。=> http://kawaiixscience.com/girls/2916

 【西脇優子さん】さん:大阪大学生物学科卒業後、奈良女子大学院にて修士号(生物学)取得し、博士号(理学)を大阪大学で取得。現在はOISTにて神経発生ユニットに所属。研究者としてのキャリアを選んだ理由についてのお話です。。=> http://kawaiixscience.com/girls/2921

 

●関連サイト: 沖縄科学技術大学院大学(OIST)

  • カメラマン:矢嶋 健吾

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