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日本マイクロソフト・エバンジェリスト渡辺弘之氏と理工系女子の“ぶっちゃけガチ”トーク

日本マイクロソフト㈱ デベロッパーエクスペリエンス&エバンジェリズム統括本部 エバンジェリ スト(*1)

企業編渡辺弘之

日本マイクロソフト㈱ デベロッパーエクスペリエンス&エバンジェリズム統括本部 エバンジェリ スト(*1)

アカデミックエリア(学生、先生)に対するマイクロソフトテクノロジーの啓発活動を行っています。趣味は、読書。音楽鑑賞。映画鑑賞。スポーツ観戦。旅 行。

取材日:2014年11月

“ぶっちゃけガチ”トークのテーマは、”社会インフラとして「公器」の存在となった「IT」。その可能性とこれからの課題を考え、いま学ぶべきこと・身につけることとは何か?” 情報系専攻ではない理工系女子が情報系のプロであるエバンジェリスト(*)に日頃の疑問をぶつけます。さて、どんな“ぶっちゃけガチ”トークタイムとなったでしょうか。。。

(*) エバンジェリスト:難解技術を分かりやすく伝道するプロ

 

☆対談に参加してくれた理工系女子☆

MS_profile_02★関瑛理子(せきえりこ):東京大学 理科Ⅱ類1年生。東京都出身。薬学、公衆衛生学に興味があり。

★中谷礼旺菜(なかやれおな):横浜市立大学 国際総合科学部理学系 1年生。現在はプログラミングに興味があり。好きなバンドは『フジファブリック』。

 

ITリテラシー(情報を使いこなす力)格差

interview_01瑛理子:これからITが発達していく中で、ITを使いこなせる人とそうでない人で格差が大きくなっていくのではないかと心配です。他の人に差をつけられないために、情報系でない自分はどうすればいいんでしょうか。

渡辺:多くの人が抱えている不安だと思います。けれどITは、人間がより便利に、快適に暮らすためのもので、誰かを取り残して発展していくものではないと思います近代日本では「読み・書き・算盤」と言われていて、文章を読めることや計算ができることが教育としての基本でした。しかしこれからはITのスキルが基本スキル、国民全員にとって必要なものになります。

ただ、過渡期において使いこなせる人とそうでない人に差ができてしまうのは事実です。マイクロソフトとしても、格差ができないように政府やいろいろ なパートナーと共に対策を考えています。世界全体で見ると、ゲームをするだけじゃなく作れるように、アプリをダウンロードするだけじゃなくて開発できるよ うになろうという動きがあります(*1)。もちろん全員が作れる必要はないけど、仕組みを知っていることが重要。(*1) http://code.org

すべての学校のすべての学生がコンピュータ ・ サイエンスを学ぶ機会を与えられるべきだ

自動車を考えてみてください。自動車を実際に作れたり、修理できたりする人は限られる。けど、ガソリンが燃えてそのエネルギーでエンジンを動かしてタイヤが回って動く、というように自動車が動く仕組みはみんな知っているよね。そういう意味でプログラミングを学んでソフトウエアの仕組みを知っておくことは大事だと思います。

スマホ(スマートフォン)の登場

interview_02礼旺菜:スマホが普及したことでマイクロソフトの中で変わったことはありますか。

渡辺:マイクロソフト創業者のビルゲイツの夢は、一人が一台のパソコンを持つことだった。今はパソコンの代わりにスマホやタブレットを持つ人もいる から、マイクロソフトも今はそれらの開発に力を入れています。「モバイルファースト、クラウドファースト」(*2)というメッセージで、社内の変革が進ん でいます。

(*2)「モバイルファースト、クラウドファースト」:マイクロソフトの変革を表すメッセージ。パソコンの会社ではなくて、モバイル端末、クラウド(ネットワークの向う側にあるデータセンターのこと)を提供する会社に変革しています。

 

礼旺菜:近頃はウェアラブルデバイスも注目を浴びていますよね。

渡辺:そうですね。ウェアラブルやNUI(ナチュラルユーザーインターフェイス)も期待されています。音声や脳波で操作ができるメガネや時計が出て きたり、身近な椅子や机がIT端末になっていきます。こうやってわざわざパソコンを取り出さなくてもいいようになるかもしれない。

これからの在るべき「情報の授業」

渡辺:最近ITの負の部分を心配する声を耳にします。その原因の一つは学校の教育にあるのかもしれませんね。学生時代にほとんどIT教育を受けてこなくて、社会人になってからいきなり一人一台PCを使うような環境に直面するので、不安に思うのは理解できます。

瑛理子:高校の情報の授業はすごく初歩的なこと、インターネットの使い方から始まるんですけど、急にプログラミングとかに飛んでしまうんですよね。 そこで脱落した人も多かったです。また、タイピングスキルや、情報の読み取り方などの日常で使うスキル的な部分と、プログラミング等の原理の部分が混在し ていたことも、情報の授業がわかりにくい原因だと思います。

渡辺:日本でIT教育にネガティブな人は、ネットには危険な情報が溢れているからとよく言うけど。ネットの世界は現実の世界の反映ですし、ネットの 世界にだけ危険が溢れているわけではない。そういう批判は、現実の世界でも、外には危険な人がいるから、外出してはいけないと言っているのと同じに聞こえ ます。

コンピューターサイエンスを学ぶ人は、まだまだ日本は少ないから、どんどん増えてほしい。私は21世紀はITと語学が大事になると考えています。日本の教育は、ITと語学(英語)が弱点だと思うので、何とか改善してほしいと思います。

「すべての企業はIT企業」

渡辺:多くの人がマイクロソフトをIT企業と言うけれど、今の日本でITを使っていない企業はほとんどないと思います。たとえば鉄道のICカードに は、何時何分にどの駅から乗ったかという情報が記録されます。その情報は駅の改札から集められています。どこの駅にどれくらいの乗客が来るかがわかるの で、鉄道会社は駅ナカなどでビジネスをするうえでとても強い。コンビニでも、会計時にお客さんの男女や年齢を入力していて、データをためているのは有名で すよね。そのデータをもとに商品の仕入れや陳列を決めている。これらの企業は立派なIT企業だと思います。

マイクロソフトの社長も「すべての企業はIT企業」と言っています。現代は情報がないとビジネスでは勝ち残れな い。だから全員がITを学ぶ必要があるし、企業もそういう人材を求めています。昔は英語をやった方がいいとずっと言い続けていましたが、今の時代は ICT(*4)も重要です。英語は外資系や海外に展開する企業に限られても、ICTは国内の企業も全部使います。

(*4) ICT:(Information and CommunicationTechnology、情報通信技術)

 学生時代に「やっておくべきこと!」

礼旺菜:学生の今は語学やプログラミングの他にどんなことをやっておけばいいですか。

interview_03渡辺:勉強に無駄なものはないと思います。ひとつ得意な分野を深めて、あとは広く教養を身に着けておくこと外 国人と話すときに実感するのは、日本のこと教えてって言われたとき、日本の政治や歴史を知らないととても恥ずかしいということ。学校の勉強じゃなく、趣味 で良いと思う。音楽でも映画でも本でも、何か一つ熱中するものを持っていると、会話の引き出しが増える。私は音楽が好きで、アメリカ人で日本のアイドルグ ループSPEED(*5)のファンの人がいて、その話をすることで仲良くなったり、イギリスでマイナーなミュージシャンの話をして驚かれたりした。映画で も音楽でも、同時代の価値観、その時代に広く流行ったもの、そういうのが同時代の教養になると思う。昔だとスターウォーズをみんな見ていて、それが共通の 話題になったりする。だからそういう趣味でもいいので、時間をかけてほしい。

(*5)90年代を代表する沖縄出身の女性アイドルグループ

ITが創るこれからの社会

瑛理子:これから発展していくITはどのような社会を作っていくと思いますか。

渡辺:ITはインフラの一つになると思います電気ガスと同じように、一家に1本ネット回線をひいているでしょう。ネットがないととても不便だから。

瑛理子:そういえば、前に東南アジアにいったとき、電気ガスがあまり整備されてなくてもネット回線は普及していました。

渡辺:カエル跳び現象(*6)と言われています。既存権益がないから、新しい技術を導入しやすい。たとえばアフリカでは、電話線がほとんどひかれて いない地域なので、もの凄い勢いで携帯電話が普及する。そういう意味では、日本や欧米を追い越して、後進国から最新技術が普及するかもしれない。

(*6) カエル跳び現象(leapfrog phenomenon):スマートフォンの普及やソーシャルメディアといった、情報通信産業領域においてはカエル跳び現象、つまり、最初から先端技術を導入し、スピードよく一気に先進国を追い越してしまうこと

マイクロソフトで活躍する女性

礼旺菜:マイクロソフトではどのような女性が活躍しているんですか。

1411041022483163渡 辺:マイクロソフトは、ダイバーシティ(多様性)を大切にしている企業です。性別、年齢、国籍、人種、障碍のあるなしで差別してはいけない。男女平等は、 マイクロソフトでは、もちろん当たり前で、企業として自然にそれを実現しています。産休、育休にしても、ワーキングマザーではなく、ワーキングペアレンツ という考え方をしています。

 ITは社会のインフラだから、全ての人のことを考えて作っていかなきゃならない。そこでダイバーシティが大切になる。プログラミングは 男の子のオタクみたいな人がやるっていうイメージが浸透しているのは良くないよね。マイクロソフトには、女性でも、バリバリとプログラミングコードを書い て、ソフトウエア開発に携わる女性エンジニアがいます。

ITはインフラという時代

瑛理子:すべての企業がIT企業という考え方は、確かに、と思いました。私が専攻している薬学も。

渡辺:過去のデータを分析したりシュミレートしたり、製薬もITなしにはできないですね。マイクロソフトは、コンピューターウイルス対策を研究していて、コンピュータウイルスを撃退するためのアルゴリズムがワクチン開発に応用された例もあります。

礼旺菜:情報を持っている、という面ではどの企業もIT企業で、その情報の活用の仕方が大事なんですね。

渡辺:現代はITというインフラがあって、それを上手く使いこなしている企業や個人が伸びていく時代。自分だったらどうすれば使いやすいかを考えて、アクティブにITに取り組んで、前に進んでいってほしいと思います。

渡辺さん、瑛理子さん、礼旺菜さん、ありがとうございました!!

  • カメラマン:工藤 玲久
  • ライター:廣政 緩子(慶應義塾大学大学院 数理科学専修)

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